ローズホテル横浜 パティシエ 新屋栄弥子インタビュー

お客様に寄り添い、感動を呼ぶケーキ作りを

憧れのパティシエとの出会い

「飲食店でのバイト経験が多く、就職するなら飲食業だと思っていました。その中でもケーキがすごく好きだったので、料理よりスイーツ系。どこかでケーキの勉強をしたいと思った時に、雑誌でイル・プルー・シュル・ラ・セーヌのパティシエ弓田亨さんを知り、弓田さんが出された本などを読むうちに憧れの存在になりました。弓田さんはケーキへの情熱がすごくて、その言葉の一つひとつが胸を刺すように自分にヒットして…。その情熱は自分と似ているとも思いました。私も弓田さんのようになりたい、そんな思いから弓田さんがやっていたプロ向けの学校に通い、パティシエとしての一歩を踏み出しました」

原点と経験値でキャリアを紡ぐ

「普通のレシピでは『卵と砂糖をブランシール(すり混ぜる)する』とか『バターはポマード状にする』がセオリーでも、弓田さんの教えは全部逆。その方が生地がだれないし、仕上がりが全然違うんです。そういう逆説的な教えが結構あって。でも弓田さんのレシピで作るとスポンジはだれない、クッキーは口どけがいい、空気を入れないことでチョコレートもおいしいとか、実際にそうなんです。現在はキャリア15年になり、さまざまなカフェやホテルで経験を積んだことで考え方の幅が広がりました。学んだことと経験値で臨機応変に対応していますが、弓田さんのレシピが私の原点で、今もケーキ作りの基礎となっています」

思い通りのスイーツを作るために

「ケーキ作りで大切にしているのは、よい仕上がりをイメージすること。スポンジ生地ひとつとってもただ作るのではなく、キメの細かいスポンジにしたい、と思ったらそこから逆算し、メレンゲのたて加減や砂糖を入れるタイミングなどを考える。口どけなめらかなムースをイメージしたら、どう乳化させるか、生クリームは6分立てがいいのか、7分立てか8分立てか、仕上がりにあわせて変えていく、というような。創作スイーツの場合は、常に面白い組み合わせやセンスのある仕上げを大切にしています。使う素材は定番にはないひねったもの好きで、例えば野菜のジャムやスパイス、塩、わさび、納豆とか。それと、ケーキは見た目が一番だと思っているので、お客様に選ばれるような仕上がりにもこだわっています」

“ケーキの一流”を目指すパティシエとして

「ローズホテル横浜のスイーツには季節感があり、幅広い年代層に受け入れられる定番商品が揃っています。また婚礼や宴会などの用途があるので、例えば中華風や和風のお菓子のオーダーやウエディングケーキなど、作るもののジャンルが多彩で楽しいですね。これからもお客様に感動していただけるケーキを届けたいですし、お客様の好みに寄り添って『おいしい!』『また食べたい!』と喜んでいただけるケーキ作りをしていきたいです。また、パティシエ個人としては、自分が思う“ケーキの一流”を誰よりも極めることが目標。今に満足せず、妥協せず、自分の思いを貫いていきたいです」

家族がテーマのクリスマスケーキ

「ローズホテル横浜では、定番から新作まで6種類のクリスマスケーキをご用意しています。私が創作したのは、オレンジ香る『クリスマスショコラオランジュ』、チョコレート細工の大きなリボンが印象的な『クリスマスルージュ』、そしておすすめの『クリスマスピスターシュ』。これはキルシュ香るグリオットゼリーとグリオットムースを相性のよいライチ風味のピスタチオムースではさみ、下にピスタチオとチョコクランチをひいて5層仕立てにした優しい味のケーキです。家族みんなが笑顔で味わう瞬間を思い描き、ケーキの上にはチョコレート細工の雪だるまの親子をのせました。クリスマスケーキを通じてお客様一人ひとりが幸せを感じてくれたらとても嬉しいです」