
半世紀を越えて作り続ける、伝統と革新の月餅
家族だんらんを象徴する焼き菓子
十五夜の満月を愛でながら、秋の豊作を祝う節句・中秋節。春節や端午節に次ぐ中国伝統行事の一つとして知られ、2025年は旧暦の8月15日にあたる10月6日となります。日本でもお月見の文化はありますが、中秋節は別名・団円節とも呼ばれ、嫁いだ娘や遠く離れて暮らす人たちも帰省し、家族みんなで食卓を囲むそうです。そんな節句に欠かせないのが、日本でもおなじみの月餅(ユエピン)。唐の時代にも存在した伝統的なお菓子で、満月に見立てた丸い形が家族円満の象徴といわれています。
代々受け継ぐ、伝統の職人技
重慶飯店で月餅が販売されるようになったのは、中華饅頭や中華菓子の販売を専門とした「重慶飯店第一売店」がオープンした1971年から。当時は木型を使い、一つひとつ作っていましたが、現在は金型を使用して機械化されました。ただ、そんな中でもこの時期だけに販売される限定商品は中国や台湾、日本の職人がほとんど手作業で仕上げています。中秋節を迎えるピーク時には、1日に最大1,700個の月餅を作り上げるというから驚きです。重慶飯店の月餅の特長は果物由来の優しい甘味を付け加えた皮と、濃厚でありながら自然の甘さが広がる黒餡。このバランスが絶妙で、口に入れた時の食感や舌触りはしっとりなめらか。まさに職人技が光る逸品です。

満月を閉じ込めた、中秋節限定の大月餅
中秋節の時期だけに販売される「豆沙蛋黄(トウサタンファン)大月餅」は直径約8cmの大ぶりな月餅。黒餡の中にアヒルの卵の黄身を塩漬けにしたものが2つ入っており、切り分けた時の断面は、まるで夜空に輝く満月のよう。黄身の塩気が黒餡の甘さを一層引き立てています。今年は蓮の実の餡と黄身を包んだ「蓮蓉蛋黄(レンヨウタンファン)大月餅」を新発売。ローズホテル横浜のロビーでは、直径約1m、重さ約80㎏の巨大月餅を展示し、中秋節を盛り上げます。ちなみに2つの黄身が見えるよう綺麗に切るには、月餅の裏側をつまようじで刺しながら、黄身の位置を確認すること。ぜひ試してみてください。
新感覚の月餅づくりに挑戦
伝統の技や味を大切にしながらも若い世代に月餅の魅力を知ってほしいと、季節に合わせた新商品の開発にも力を入れています。秋は芋餡、バレンタインの時期にはチョコレート餡、春の苺ミルク餡はその一部。夏に販売された「湘南ゴールド小粒月餅」は、地元のオリジナル果実「湘南ゴールド」の果汁と果皮を白餡に練り込んだ爽やかな甘さと香りが特長で、第31回神奈川県菓子コンクールの観光みやげ品部門で技術賞を受賞しました。伝統の味と新しい味わいの月餅を重慶飯店売店やオンラインショップでぜひお楽しみください。