
お客様へ“特別”を届ける、手作り発酵調味料の世界
四川料理に欠かせない発酵調味料
「発酵調味料とは、日本食でいえば醤油や味噌などのこと。四川では生の唐辛子を乳酸発酵させた泡辣椒(パオラ―ジャオ)がよく手作りされています。私が自家製の発酵調味料を作るようになったのは、重慶飯店本館の料理長となり、メニューの考案を任されるようになってから。お客様に『いいものを届けたい』という気持ちがより強くなり、手をかけること自体に特別な意味を感じたからです。食材は季節ごとにどうしてもマンネリ化しやすいですが、発酵調味料を工夫することで新しい味の表現や展開ができるようになり、料理のクオリティに自信が持てるようになりました」


大切なのは、ベースとなる「老塩水」
「今作っているのは朝天唐辛子や青唐辛子を仕込んだ発酵唐辛子、火鍋の調味料や具材にもなる泡菜、大豆を発酵させた水豆鼓(スイトウチ)など6種類ほど。春は筍、夏はササゲや胡瓜、パプリカなど季節野菜の泡菜も作ります。発酵調味料作りに使用するのは水と塩、野菜などを漬け込み、すでに発酵させた乳酸菌たっぷりの『老塩水』。これが味のベースになります。日本のぬか床のようなものですね。難しいのは仕上がりで、同じ種類の青唐辛子でも曲がった形状の方が辛いなど、想定以上の味になってしまうことがあり、見た目で素材を見極めることも大切にしています」
五感で楽しむ、日々是発酵
「手作り発酵調味料の一番の魅力は、発酵の『育ち』を感じられること。現代では発酵具合を数値化することもできるようですが、料理人としては目で見て、香りをかいで、味を見て、日々変化する発酵過程を観察するのが楽しい。同じように仕込んでも毎回同じ仕上がりにはならないけれど、そこが面白さでもあります。いいものができた時は嬉しいし、『これを使って〇〇を作ってみよう』とメニューの幅がどんどん広がっていきます。料理に込める愛情や思いを増やしていけるのが、手作りと市販品との違いかもしれません。手間をかけたからこその魅力がお客様により一層伝わればいいなと思っています」
手間と愛情こそ特別なおもてなし
「すべては難しいかもしれませんが、将来的にはもっと多くの発酵調味料を手作りしたいですね。自家製のものを使うと、同じ料理でも他の店と重慶飯店本館とは違う味になるはずです。また、手作り発酵調味料の数が多ければ多いほど味付けや調理の仕方、あわせる素材など、料理の引き出しが格段に増え、さまざまに対応できるようになります。大切なお客様に最大限の手間と愛情をかけた料理をご提供する…それこそ、わざわざ足を運んでくださるお客様に対しての特別なおもてなしだと思っています」

「夏の唐辛子フェア」で元気に!

「『愛情こそ特別なおもてなし」をモットーに、重慶飯店本館では6月から8月まで3回目となる夏の唐辛子フェアを開催します。自家製の発酵調味料をふんだんに使った、すべての料理がおすすめのラインナップです。日本の夏の蒸し暑さは四川省の気候に似て、食欲が落ちやすい季節ですよね。そんな時こそ唐辛子の“辛さ”と“香り”をしっかり効かせた料理で暑い夏を元気に乗りきるのが一番。フェアをお楽しみに、そしてこの機会にぜひご賞味ください」